タイマッサージは、身体ひとつで行えるため、とにかくお金がかからない。特別な道具がいらないし、機械を導入する必要もない。一度習得してしまえば、死ぬまでできるし、場所を選ばずどこででもできる。お客様から感謝されるし、自分自身の健康にも良い。腕一本で食べていけるという自信が人間を強くすることにもつながる。
「このビジネスを始めるには、ざっといくらくらいかかりますか?」と質問を受けることが多いが、想定するものによっても全く違う。数万円でもできるし、こだわればきりがない。しかし、なんと言っても、マット一枚あれば始められるのがこのビジネスのすごいところだ。そのマットでさえ、お客様に借りてしまえばいらないのかもしれない。
先行投資が少ないのなら、経営も比較的簡単だ。毎月赤字にしなければ、その経営は永久に続く。事実、本業以外に冒険をして失敗し、最終的に倒産する会社も山のようにある。自分のところ以外にも、取引先が倒産するなどして、入ってくるはずのお金が入らなくなって連鎖倒産するケースだってある。タイマッサージサロンの経営なら、こういった心配がない。現金商売だから管理がしやすいのだ。事業をするには、「人」「物」「金」の3つが揃わなければできないというのが、経済の常識だが、このビジネスを始めるにはこの基本原則が当てはまらない。
もうひとつは、業界の特徴である。大企業が参入していないので、資金力にものを言わせて根こそぎ持っていってしまうような会社が業界内には存在していない。それもそのはず、セラピスト個人の力量が問われるビジネスであるために、金をかけたからといって、それに値するだけの人を育てることができるというものでもないからだ。リラクゼーション業界の最大手であるリフレクソロジーのRAJAでさえ、年商は100億円。業界全体の市場が2000億円あるので、そのシェアはたったの5%なのである。大手企業が市場を独占する業界ではないので、新参者にも勝算があるといえる。お客様は、企業のネームバリューや安心感よりも、セラピスト個人のホスピタリティやサービスを求めているということでもある。
リラクゼーション業界では、スタッフへの賃金は歩合給がほとんど。通常、経理的な言い方をするなら、給与は固定費という扱いに入る。簡単に言えば、スタッフの給与は、売上に関係なく決まった額を支払っていくという意味である。だから、社員の給与や家賃は固定費という。ただし、歩合給の場合には、スタッフが売り上げた金額に対して決まった割合を支払うだけだから、売上によってその金額は変わってくる。よって、変動費という扱いになる。つまり、スタッフが売上を上げないなら、お金を払う必要がない。経営者にとってこんな好都合なことはない。
まあ、現実的に考えれば、スタッフを苦しめてばかりいては、すぐにやめてしまって後が続かないから、いろいろと条件面を考えることになるわけだが、業界の常識が経営者にとって都合のいい塩梅であることは事実。素人でもこれならこの業界に参戦しやすいというものだ。